|
ごくさん、ごっくさん |
|
馬頭観音(大村市立福寺町)
|
ごくさん、ごっくさん
この「ごくさん」あるいは「ごっくさん」は、各町内の権現様(神社)、各家庭の神棚や屋敷神様などにお供えするものです。(参考写真は、右側の上側をご覧下さい。下側写真は大村市立福寺町、権現様の境内にある馬頭観音=馬頭様に「ごくさん」や酒などをあげたところです)
最初に、呼称のことを書きます。この「ごくさん」あるいは「ごっくさん」の呼び方は、あくまでも大村市・福重地区始め各地区に伝わる一例であって、共通の統一したような名称ではありません。当然、大村市内各所では、別の言い方をされている場合があります。
ですから、私は断定的に「今回の、この説明にて全てです」みたいなことは言いません。色々な地域では神前にあげるお供え物で種類そのものは同じでも、例えば形や数量などには違いがあります。それで、「ごくさん、ごっくさん」は、大村市福重地区の各町内のいくつかの例をあげて、箇条書き風に今回ご紹介いたします。
(1)名称:「ごっくさん」もしくは「ごくさん」と福重地区の各町内では呼ばれています。(以降「ごくさん、ごっくさん」と書いています) あと、大村市内のある町内では、別の言い方として「おぼくさん」とも呼ばれているようです。
(2)形状:尖がった三角おにぎり3個を作ります。(右側の写真参照) 尖がった三角形以外は普通のおにぎりと作り方は似ています。ただし、当然、塩は付けません。私が見た範囲内ですが、家庭用は握りこぶしの大きさ(高さ)よりもやや小さく、神社(権現様)用は大きいです。
(3)お供え:各地域の神社(権現様)などにお供えします。町内によっては、一例として(田植え終了頃の)「植え付けごもり」の時、神棚に上げ、柏手(かしわで)打って拝んで、お供えした後、参加した町民全員で「ごくさん、ごっくさん」を少しずつ手でとって食べ、まわしていきます。この時季は、田植えがほぼ終了した頃ですから、この儀式自体が、秋に向けての豊作祈願がこもっています。
各家庭用は、その時季によって様々な祈願理由があるので、ここでは例証をあげませんが、神棚や屋敷神様などに、やや小さ目の「ごくさん、ごっくさん」が、お供えされています。
(4)季節:どこの町内も大抵、新年会、植え付けごもり(田植え終了頃)、彼岸ごもり(秋のお彼岸の頃)など権現様の例祭の時に神前にお供えします。また、馬頭観音(馬頭様)のある一例として立福寺町の場合、12月の祭礼時)も同様にあげます。
(5)お供えの由来:詳細不明ですが、元々、神社(権現様)には、酒、水、塩、米などをあげています。それと同じような形式で、「ごくさん、ごっくさん」をあげているのではないでしょうか。
(6)名称の語源:「ごくさん、ごっくさん」の「ごく」は、「御供(ごく、ごくう=神仏に供える物)」(注1)が、有力説と思われます。また、五穀豊穣の「穀(こく)」(=米=おにぎり)から来ていると言う説もあります。ほかにも説もあるようですが、調べ切れていません。
<(注1)=この説は大村市文化振興課の大野氏より教えて頂きました>
(7)準備や担当:個人宅の神棚にお供えする場合は、当然各家庭でおこないます。ただし、町内でこれらを用意する場合は、大村市野田町の例では、締め元(しめもと、毎年担当班が変わり権現様の行事や掃除などを担当する役割)と呼ばれる方々が担当しています。他の町内でも呼び方は様々ですが、その年度の役回りの方々が「ごくさん、ごっくさん」を準備されています。
以上、「ごくさん」あるいは「ごっくさん」について、(2009年8月)現在で、私が分かっている範囲内を書きました。この件について、他の説とか実際のお供えの仕方など違った例があるかもしれませんので、そのことは今後も継続して調べたいと思っています。その結果、追加掲載も考えていきます。