<補足説明>
弥勒寺町には、平安末期頃から中世時代にかけて建立された様々な古い石仏がある。当然、現在もあり、その多くが個人宅あるいは私有地で祀られている。そのような土地柄の反映もあるのか、弥勒寺の馬頭観音は、上表通り明治20(1887)年(亥の年)旧3月19日、個人で建立されたものである。
元々、この馬頭観音は、個人宅周辺にあったものかもしれないが、現在は弥勒寺公民館敷地内で市道脇にあるため、車上からの見学も可能なくらい便利な場所にある。もちろん、立ち止まって見学して頂ければ、より分かりやすいが姿形そのものは、市内に極普通にある馬頭観音と似ている。
この馬頭観音の建立目的は、これまた普通にある「馬の守り神様」的な要素は当然ある。しかし、少し注目すべきは、それだけでなく、上表にある「諸願成就馬安全為」(現代語訳:馬が安全で様々な願いが叶いますように)と言う祈願文の、特に「諸願」(様々な願い)と言う部分である。
この部分は、「馬の守り神様」的な要素だけでない、馬頭観音本来の意味合いが込められている点である。後で掲載予定の高野の馬頭観音の碑文などには「天下泰平」、「国土安全」まで彫ってある。ただし、この弥勒寺の馬頭観音は、そこまで規模の大きい願い事ではないが、この「諸願」(様々な願い)と言う部分は、本来の馬頭観音を考える意味で、一つの参考事例でもある。
(初回掲載日:2014年5月2日、第二次掲載日:5月18日 )
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