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てんぐになった福ちゃん
その11 その12

(その7)
 福ちゃんは、たかい岩(いわ)から飛ぶ(とぶ)のがとくいでしたので、重井田郷(しげいだごう)の山(やま)や谷(たに)をヒラリひらりととびました。しかし、さながわち川(かわ)のタタミ八畳(はちじょう)もある大きなひらたい岩は、福ちゃんのおきにいりの石でした。

 けいこして十日もしない、ある日、この石の上は、木のかげになることをいいことに、すっかりけいこをやすんで昼寝(ひるね)してしまいました。それから、また、けいこをしなくなりました。

 でも、あそんでばかりでは鼻(はな)が元にもどらないので、また、いろんなけいこや、たかい岩からとぶことも、いやいやしていました。

 しかし、二十日目もすぎたある日、いつもより飛び方(とびかた)がうまくいかず、おおけがをして、血(ち)をながし、たかい石の下の道(みち)にうごけないでいました。

 すると、その道をあるいてきた、お重(しげ)ちゃんという娘(むすめ)さんが、とおりかかりました。
「どげんしたと?(どうしたんですか)」と、お重ちゃんがたずねると、福ちゃんは、「うまく、とべんでけがしてしもうたと(うまく、とべなくて、けがしてしまったのです)」とこたえました。

 「まっとかんばよ。おとうさん、つれてくるけんが(まっててね、おとうさんをつれにいってくるから)」といって、村にもどり、こんどは、ふたりでたすけにきてくれました。

 お重ちゃんの家(いえ)で、おとうさん、おかあさんたちから、福ちゃんは、かいほうしてもらいました。けががひどかったので、しばらく、ここにおせわになることにしました。

(けいさいび:2005年7月23日)

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