代明け(しろあけ)、代掻き(しろかき)
まず、極簡単に代明けのことを書きますと、それは、次の「」内のことです。「4月か5月頃に田起こしした田んぼに水を張り、トラクターなどで土を柔らかく平らにして田植えができるような状態にすること」と言えるでしょう。このページは、先に掲載中の田起こしとも関係がありますので、そのリンク先から、ご覧願います。田起こし紹介ページについて、次の「」内のことを書いています。
(注:昨シーズンの) 「 稲刈りが終わり、田んぼには稲の切株や草などがあり、さらにはそれまでは水を張っていた所ですから、収穫後は地面が乾き、硬くなってもいます。田起こしは、その硬くなった田んぼの地面、切株、雑草、春に花咲く蓮華草などを耕し、土を細かく柔らかくする目的があります。
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トラクターでの代明け(しろあけ) 田んぼには水を張り、土を柔らかく平らにする農作業
(2015年6月9日撮影) |
また、この田起こし時には、田んぼに水を張ることはありません。なお、この田起こしは、田植え直前に水を張った状態での代明け(しろあけ)とは、その作業の目的も意味も、仕事のやり方も全然違います。 」
現在ならばトラクターでの作業が、そのほとんどですので、一見似たような農作業に見えます。でも、田起こしと今回紹介「代明け(しろあけ)、代掻き(しろかき)」の一番大きな違いは、「田んぼに水が張ってあるか、ないか。田植え直前の作業か、どうか」の差と言えます。
この作業の主目的は、下記国語辞典通り、「水田に水を引き入れ,土を砕き,ならして田植えの準備をすること」です。あと、少し補足をしますと、それまで田んぼに水がなかったぶん、表面には蓮華草や、種々の雑草も多く生えていました。
それらをトラクターで、土とともに混ぜて下に練り込むようにすると、水の影響で細かい土や泥が表面に浮いてきます。そして、その土が雑草や、その種(たね)に対して重石(おもし)やフタみたいになってきて、田んぼに水が張ってある期間は、生えにくくなる効果もあります。
ですから、田起こしの後、あまり期間が経っていないにも関わらず、この代明け、代掻きは、トラクターで繰り返し作業されている農家も見かけます。中には、1回代明けをした後、数日期間を空けて再度、地面をより平らにするように同作業をされているところもあります。このような作業は、一律に決まったものではなく、どのようにするかは農家や田んぼの状況しだいと言えます。
代明けと代かきの意味の微妙な違いについて
順序が後先になりましたが、今回書いています言葉で、全国例と大村(大村弁含む)での言葉の微妙な違いを次に書いていきます。私が度々見ています広辞苑、大辞林や大辞泉などの国語辞典には、今回の代明けの用語解説はありません。しかし、代掻きの方は、いずれの辞典にも書いてあります。まず、次の<>内をご覧願います。
< (大辞林より) 代掻き(しろかき)=水田に水を引き入れ,土を砕き,ならして田植えの準備をすること。 >
上記の辞典解説を見ますと、今回の代明けページで紹介している農作業内容と、ほぼ同じです。そのことから考えられるのは、代明けの言葉自体は、私の住んでいます長崎県大村市内や、例えば九州の限られた地域内で使われている用語ではないだろうかと言うことです。
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トラクターでの代明け(しろあけ) 田んぼには水を張り、土を柔らかく平らにする農作業
(2015年6月9日撮影) |
ただし、大村市内でも代掻きの言葉自体も使われているので話しが少しややこしくなりますが、私の住んでいる地域での二つの言葉の微妙な差を書きます。
・私の住んでいる地域での代明け、代掻きの微妙な言葉上の差とは
(1)代明けの意味は、春の田起こし後、6月頃に初めて田んぼに水を引き(入れ)、トラクターなどで土を柔らかく平らにして田植えができるような状態にすること、つまり、辞典にあるような代掻きの意味も含めた総称のような用語が、代明けの言葉と思われます。
この時季、年配の会話として(大村弁で)「ありゃ、あんたんとこは早かねえ。もう代(しろ)の明けましたバイなあ」となどと話されます。これは、共通語に直しますと、「あなたの所(の田んぼ)は、(農作業が早くて)もう代明けが終わったのですね。(あとは田植えを待つばかりですね)」と言う、やや褒め言葉にも近いものです。このような会話時、少なくとも大村では代掻きの言葉は使われないと思われます。つまり、田植え予定の耕作地(全部の田んぼ)を表したような言い方でもあります。
(2)代掻きの言葉の方は、代明けと同意語ですが、上記の解説(総称的な言い方)よりも、部分的な作業を指していると思われます。つまり、大村弁の会話の一例として、「今朝は、あん田ば代掻きしましたバイ。昼から、こっちの田ですバイ」(補足も含めた共通語訳:「今朝は、あそこに見える田んぼの代掻きをしました。午後からはこちら側の田んぼの代掻きを予定しています」)みたいことがあります。
先ほどと重複した解釈ですが、前の会話内容でもお分かりの通り、代明けが総称的な意味ならば、代掻きの方は田んぼごと、あるいは作業ごとの意味合いがあるのではと思っています。ただし、現在では、二つの用語とも厳格な差はなくて用いられてもいるようです。
あと、ここから書くことは、私の推測です。私の子供の頃(50年以上も前)ですから記憶定かではありませんが、トラクターや耕運機などがなかった時代、馬や牛を使って代明けや、代掻きをしていました。その当時、名称までは覚えていませんが、独特の農機具も数種類ありました。この当時、最初荒く代明けをして、その後に農機具を変えて仕上げみたいにして代掻きをしていたのかもしれません。
そのような農機具や若干の作業の差が当時まであって、代明けと代掻きの二つの言葉があった可能性もあります。しかし、現在は、ほとんどトラクターで全部できるので、言葉上だけ微妙な違いとして残ったのかもしれません。
補足
(この原稿は準備中。しばらく、お待ちください)
コメ関係ページ:田起こし(たおこし) 、 代明け(しろあけ)・代掻き(しろかき) 、 田植え(たうえ) 、 稲刈り(いねかり) 、 (稲の)掛け干し(いねのかけぼし) 、 脱穀(だっこく) 、 籾すり(もみすり) 、 精米(せいまい) 、 餅(もち)つき