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写真1 コンバインによる稲刈り作業(2006年10月9日撮影) |
稲刈り(いねかり)
稲刈りとは、春に田植えされた稲が、秋になり黄金色に実り、その稲を刈り取る作業を主に言います。昔の全て手作業による稲刈り作業ならば、掛け干しも一対作業で、時間差はありましたが、ほぼ同日時進行みたいなものでした。しかし、コンバインなどの機械による稲刈り、さらには脱穀前のコメ(米)の機械式乾燥によって、この稲刈り作業、掛け干し作業は、違った形になりました。(詳細は、この稲刈りのページと、掛け干しのページを参照) ただし、現在でも、一対作業でおこなわれてもいます。
先に述べたように本来ならば、ほぼ同日時進行みたいな稲刈りと掛け干し作業ですが、この稲刈りページで、掛け干し作業も書きますと、内容が重複して分かりにくくなりますので、あえて今回分けて書きます。なお、現在、大村市内でおこなわれている稲刈りの作業形態は、私が見た目で大別しますと、次の、1)コンバインによる稲刈り、2)バインダーによる稲刈り、3)稲刈り鎌(ノコギリ鎌)による稲刈りと思われます。また、この順番は、現在では作業形態の多い方からの順番でもあります。
下記の項目から、1)〜3)について書いていきます。ただし、手作業と機械作業の違い、あるいは機械別の作業の違いなどはあっても、稲刈り自体には変わりありません。そのため、下記項目別ながら同一表現や重複内容があっても、その点はあらかじめ、ご了承願います。
1)コンバインによる稲刈り
この項目では、コンバイン(combine)による稲刈りについて書きます。大村市内の場合、昔、稲刈りが完全手作業時代から急に現在主流のコンバインが導入されたのではありません。稲刈り機械化の第一歩は、次の項目=2)バインダーによる稲刈りからだったと、私は記憶しています。さらに時が経過して、現在では、コンバインによる稲刈りが一番多い作業形態と言えます。そして、田んぼの広さなどに応じて、大型から小型まで様々あるようです。
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写真2 コンバインによる稲刈り作業(2015年10月15日撮影) |
また、農家にとって秋の繁忙作業は、昔のほぼ完全な手作業時代ならば稲刈り、掛け干し(自然乾燥)、脱穀、籾摺り(もみすり)、供出(きょうしゅつ=農家が政府に米を売る)までは一連の行程でした。しかも、かなりの重労働でした。それらのいくつかを解放したのが、このコンバインです。
実は、この機械は単に稲を刈るだけではなく、同時に脱穀(実った稲から実の部分だけを取り離すこと)、稲藁(いなわら)のバラ落としや、刻み落としなどもします。しかし、ここで脱穀や稲藁のことまで触れますと、稲刈りのテーマから外れますので、この項目では省略します。
また、コンバインにも、使う形式や大きさなどによる機械の種類が様々ありますが、ここでは主に(写真1、写真2に写っているような)乗用式2条刈のコンバインをもとに説明していきます。この2条刈り機は、小回りが利くので色々なな形になっている田んぼで多く使用されている一つです。
ただし、どの種類のコンバイン所有の農家でも、市道もしくは農道から田んぼに入るため、あるいは機械が入りにくい田んぼの端側は事前に稲刈り鎌(ノコギリ刃)を使って手作業で切っておられます。このようにしておくと、コンバインが田んぼに入りやすく、また方向転換や前進後退などがしやすくなります。
走行スピードについてですが、それこそ作業者(運転者)によって違いますが歩く速度より、かなり速い感じです。また、脱穀した籾(モミ)をコンバインに一時貯めるタンクの大きさも機械の大きさや製造メーカーによって、マチマチです。あと、先のタンクが一杯になる前に、排出機を使って、軽トラックなどに積まれている別タンクに移しかえていきます。
そして、トラックのタンクに移しかえられた籾(モミ)は、たいていの場合、市内北部ならJAながさき県央の北部ライスセンター(今富町)、南部ならば南部ライスセンター(陰平町町)に運びこまれ、乾燥します。以上が、コンバインによる稲刈り作業の一連の流れです。
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写真3 バインダーによる稲刈り作業(2015年10月19日撮影) |
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写真4 バインダーによる稲刈り作業(2015年10月19日撮影)
狭い田んぼでも作業可能 |
2)バインダーによる稲刈り
まず、バインダー(binder)の意味ですが、国語辞典の大辞泉には「稲などを自動的に刈り取って束ねる農業機械」と書いてあります。この機械を見かけたのは、私の記憶が定かではないので明確には言えませんが、中学生時代(1940年代中頃)にはあったような気がします。手押し式の田植え機械より、少し遅く導入されたみたいでした。また、上記の1)コンバインによる稲刈りの導入時期より、相当早かったと思います。
それまでは、稲刈りと言えば、全て(下記項目の)「3)稲刈り鎌(ノコギリ鎌)による稲刈り」でした。この作業は、収穫の喜びはあったものの田植えととも腰をかがめた重労働で、しかも作業日数もかかる仕事でした。そのため、家族全員または親戚などからの手伝いも必要としていました。ただし、稲の品種や実った状態の違い、あるいは乾燥などとの関係から、田植えほど「数日で一気にする」という時間的制約はありませんでした。それでも、農家にとって秋の繁忙期に変わりはなかったですが。
そのような状態を一変させたのが、今回紹介のバインダーの導入でした。今ならば、高額なコンバインに比べればバインダーは、かなり安い機械です。しかし、導入当初の頃、農家にとって、かなりの金額負担であったことは変わりありませんでしたが、共同購入(共同利用)含めて、ほぼ全農家に一気に導入されました。
それだけ、(日数的もかかり、腰をかがめ続ける重労働)による手作業の稲刈り負担から、このバインダーは解放したと言うことです。なお、作業に掛かる人数も1名でも出来ますが、大抵の場合、夫婦とか家族の範囲内でしょう。そのようなことから農家にとって、ある意味画期的な機械だったのでしょう。
あと、作業の仕方ですが、まず、田んぼへバインダーが入りやすく、あるいは方向転換がやりやすいようにするため、田の入口、四隅(よすみ)、曲がった畔(あぜ)近くや、土手が迫っている所などを事前に稲刈り鎌(ノコギリ鎌)による稲刈りしておきます。これを別名、「枕刈り」とか言う方もおられます。こうしておけば作業性が良くて、一気に稲を刈り取っていけます。
(写真3参照) また、バインダーは稲を刈り取って紐(ひも)で束ねて、田んぼへ落とすだけの機械です。自前で脱穀まではしません。ですから、通常作業の場合、束ねられた稲は、同じ日か後日に、今度は掛け干し作業をする必要があります。
(写真4参照) また、このバインダーは、写真4の通り、幅の狭い田んぼでも楽々と入り、刈り取っていきます。さらには、台風などの強風により倒れた稲も、まるで起こすようにして刈っています。走行スピードですが、人の歩く速さと大体同じです。
広い田んぼばかり所有されている農家は、圧倒的に上記の1)コンバインによる稲刈り作業のみが多いと思われます。しかし、中には先に述べたように(大村市内では)山間地、傾斜地、平地でも狭い田んぼでは、良く使われている機械ですから、バインダーは現役バリバリと言えます。
さらに言えば、炊いた時に、より美味しいと言われてい掛け干しにするのには、バインダーはなくてはならないものです。このことに、こだわりの強い農家もあり、その意味でバインダーは、コンバイン主流の今でも手放せない稲刈り機とも言えます。
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写真5 ノコギリ鎌(2015年10月16日撮影) |
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写真6 福重小学校・児童による稲刈り(2014年10月30日撮影) |
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写真7 福重小学校・児童による掛け干し(2014年10月30日撮影) |
3)稲刈り鎌(ノコギリ鎌)による稲刈り
まず、右側の写真5のノコギリ鎌(がま)を参照願います。目測ながら、刃の長さは約16cm、柄の長さ約20cmでしょうか。当然、作り手(製造者)によって大きさは違ってきます。あくまでも私の個人的感想ながら、最初手にした時、意外と思うほど全体スマートで軽量でした。ですから、長時間持っていても、手が疲れません。
このノコギリ鎌は、稲だけではなく、かなり繁った太めの雑草、野菜、篠竹( しのちく)や、さらに切ろうと思えば小指程の木の枝まで、とにかく良く切れます。蛇足ながら、あまりにも切れ過ぎて、私は学生の頃、作業の下手さ加減もあったのですが、指まで切ったのを覚えています。かなり古くから使われていますが、このノコギリ鎌の歴史ついて、私は分かっていません。
通常の鎌=平鎌(ひらがま)ならば一軒の農家に数本あれば事足りますが、このノコギリ鎌は、元々稲刈り用ですから家族全員分、あるいは手伝って下さる人の分など含めれば、各農家5本以上あったと思われます。そして、稲刈り時季が近づいてくると、砥石で鎌を丁寧に研いで、表面には少し油もひいて準備万端で迎えました。
先の項目に書きました「バインダーによる稲刈り」や、「コンバインによる稲刈り」のように機械化されるまで、どこの農家でも、このノコギリ鎌による手刈りしか方法はありませんでした。現在では、各機械が田に入りやすいように、あるいは田の中で方向転換しやすいように、少し手刈りもあります。しかし、通常の場合は、機械で稲刈りしますので、ほとんど見られなくなりました。
そのような中で写真6で見られるのが、大村市立福重小学校の5年生(約50人の)児童による稲刈り体験です。(この2014年10月30日「福重小学校の稲刈り体験 (概要報告)」は、ここからご覧下さい) 児童による体験学習なので、最初少し不慣れはあるものの数分も経たない内に、サクサク、ザクザクとスピードアップで刈り取られていきました。
あと、この手刈りは、最後には、(写真7を参照)稲を掛け干しするために昨年の稲藁(いなわら)を別に準備しておいて、数本で束ねていく必要もあります。その束(たば)は、稲の株(本数)が多過ぎても少なすぎても良くありません。稲掛け竿に掛けやすく、天日干しに適した大きさは、人に習ったり、経験で分かってきます。
また、この束は、天日干し(乾燥)後、そのまま脱穀機に入れていきますので、いずれにしても手渡ししやすい大きさがいいと思われます。あと、稲刈り鎌(ノコギリ鎌)による稲刈りをしてみると、改めて時間も労力もかかる作業だと言うことが体を持って実感します。
さらに言えば、「バインダーによる稲刈り」や、「コンバインによる稲刈り」のような機械化が急激に進んだ要因も分かります。しかし、これからも余程のことがない限り、この作業は全部なくならない作業でもあると思われます。
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