(稲の)掛け干し(いねのかけぼし)
まず、このページ掲載の(稲の)掛け干し作業写真を参照願います。これらの写真のように通常、大村では稲を刈り取った田んぼに(腕の太さ位の)竹か丸太2本もしくは3本の稲掛け足(いねかけあし)を組んで数メートル間隔で並んで立てます。
そして、その上に長い孟宗竹もしくは丸太を渡します。それを稲掛け竿(いねかけざお)と、呼んでいます。これら総称して、国語辞典の大辞林には、「稲架(はせ、はぜ、はざ)=刈り取った稲をかけて乾かす設備」と書いてあります。大村では、どちらかと言いますと稲架のことを、「はぜ」との呼び方が多いようですが、現在この言葉自体あまり使われてもいないようです。。
次に、先に掲載中の稲刈りページを、ご参照願います。このリンク先のページにも書いていますが、昔、稲刈りと言えば全て手作業だけの頃は、稲刈り作業と、今回紹介の掛け干しは、一対作業でした。当然、時間差はありましたが、ほぼ同日時進行みたいなものでした。しかし、コンバインなどの機械による稲刈り、さらにはコメ(米)の機械式乾燥によって、この掛け干し作業は少なくなりました。
ただし、現在でも農家によっては、この掛け干し作業はおこなわれています。後の項目でも書きますが、一般に機械乾燥よりも、この掛け干しの自然乾燥米が炊いた時に、美味しいとも言われています。また、田畑の広がる農村地帯では、掛け干しがズラリと並んだ田んぼは、絵にもなるような秋を代表する風景の一つでもありました。
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写真3、中央部左右:掛け干し作業中(手前側:バインダーで刈ったところ) |
掛け干しは何故するのか
まず、このページ掲載中の写真1と写真2を、ご覧願います。両写真の撮影年の間隔は、73年間もありますが、稲掛け足(いねかけあし)も稲掛け竿(いねかけざお)も、全く同じような造りで、掛け干しの仕方も同様だと言うことが改めて分かりやすいと思われます。
何故このように掛け干しをするかの理由は、いくつかあります。それは、大別しますと、下記の(1)〜(4)と思われます。
(1)実った稲穂(コメ)には、まだ水分があり、それを天日干しで自然乾燥するためです。水分を含んだ、刈りたてのコメをそのまましておけば、後で品質上(カビの発生や長期保存できないなど)の問題も出てくるので、乾燥の必要性があるからです。
ですから、田んぼに生えていた頃と違って稲の株(かぶ、下側)を上部して、逆に、それまでは上側にあった穂先を下側にすることにより太陽光線が、穂先側に良く当たります。また、このやり方が写真でもお分かりの通り、上側・下側と二段干しも出来て、天日がどちらともに当たりやすいのです。
(2)実った穂先を下側にすることで、それまで貯まっていた稲の養分が米(コメ)側に降りてくることから美味しくなるという説も、私は聞いたことがあります。この件、下記(4)とも関係があります。ただし、これには異説もあるようなので、あくまでも参考意見程度にして頂けないでしょうか。
(3)田んぼのある場所や狭さの関係も大きいでしょう。例えば、田んぼのある場所が傾斜地(段々畑)や、平地でもコンバインが入れないような狭い田んぼでの稲刈りは、「バインダーによる稲刈り」か、「稲刈り鎌(ノコギリ鎌)による稲刈り」しか方法がありません。当然、同時に脱穀ができませんので、一旦、田んぼに掛け干しをせざるを得ない状況です。
(4)(この項目は上記2)とも関係あり)一般に、「機械乾燥よりも、天日干しの自然乾燥した米(コメ)が美味しい」と言う理由も大きいといえます。それは、米とは違いますが、例えば太陽光線を一杯浴びて育ったニンジンなどは、甘味があり美味しいと言う例と同じでしょう。また、ゆっくり日時をかけて乾燥させた方が時間の速い機械乾燥よりも籾(モミ)の割れも少ないと言われています。
ですから、コンバイン作業も充分可能な広い田んぼ所有の農家でも、美味しいコメへのこだわりからか、あえてコンバインは使用されず、バインダーでの刈り取りと、掛け干しをされている所もあります。私自身、そのような光景は今でも良く見ます。(写真3を参照)
補足
(この原稿は準備中。しばらく、お待ちください)
コメ関係ページ:田起こし(たおこし) 、 代明け(しろあけ)・代掻き(しろかき) 、 田植え(たうえ) 、 稲刈り(いねかり) 、 (稲の)掛け干し(いねのかけぼし) 、 脱穀(だっこく) 、 籾すり(もみすり) 、 精米(せいまい) 、 餅(もち)つき